ネットでカウンセラーの資格について検索すると、さまざまな名称の資格が出てきます。
名前も似たようなものばかりで区別がつきづらく、カウンセラーの資格を取りたいと思っても、どう判断すればよいのか迷ってしまうことも多いでしょう。
この記事では、カウンセラーの資格を取りたいと考えている方に向けて、カウンセラーの資格にはどのようなものがあるのか、どの資格が役立つのかなどについて説明します。
日本におけるカウンセラー資格
ネットでカウンセラー資格について検索して出てくるもののほとんどは、認定団体による民間資格です。
日本では2017年に心理支援の初の国家資格である公認心理師が誕生していますが、それまではカウンセラーの資格は民間資格しかありませんでした。
初めてできた国家資格も、その資格をもった人しかその業務をやってはいけないという「業務独占」ではないため、現在もカウンセラーと名乗ることやカウンセリング業務をすることは誰でも可能です。そのため、今も昔もカウンセラーの民間資格は後を絶たない状況にあります。
民間資格とは何か
民間資格とは団体や企業が認定する資格であり、法律で定められる国家資格や、官公庁や大臣が認定する公的資格とは異なります。
国家資格には医師や弁護士、保育士、教師などがあり、公的資格には簿記や介護支援専門員(ケアマネージャー)、準看護師などがあります。国家資格や公的資格は就職における実用度や社会的信用度が高いものが多いと言えます。
一方、民間資格は、就職における実用度や社会的信用度はまちまちです。その団体が認定しているだけで就職においては実用的ではないものや短期間の講習を受けただけで取得できるものもあれば、ある種の就職において必須であったり、高度な専門教育課程を経ないと取得できないものもあります。
実際のカウンセラー資格
では、カウンセラー資格にはどのようなものがあるのでしょうか。Wikipediaに「日本の心理学に関する資格一覧」というカウンセラー資格の一覧のようなものがあります。
これをみると膨大なカウンセラー資格があることが分かります。以下では、その中でも代表的なものやよくネットでみかけるものについて簡単にまとめました。
カウンセラーの国家資格
公認心理師
公認心理師は2017年に出来た心理支援に関する初めての国家資格です。
・資格認定団体:文部科学省・厚生労働省(日本心理研修センター)
・受験資格:指定の大学院もしくは大学での既定科目の履修・実習
・試験:筆記試験
・資格取得にかかる期間:大学4年間、もしくは大学4年間+大学院2年間
・資格更新:なし
キャリアコンサルタント
2016年に誕生したキャリア相談の国家資格です。厳密にはカウンセラーではなくコンサルタントですが、相談業務であるため記載しました。キャリアコンサルタントのより高い技能を検定する「キャリアコンサルタント技能検定(1級、2級)」もあります。
・資格認定団体:厚生労働省(特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会・日本キャリア開発協会)
・受験資格:認定講習の修了、または実務経験など
・試験:筆記試験、実技試験
・資格取得にかかる期間:最短で約2か月
・資格更新:5年ごとの更新
大学・大学院における教育が必要となるカウンセラー資格
臨床心理士
臨床心理士は民間資格の中では最も名前が知られており信用度も高いです。
・資格認定団体:日本臨床心理士資格認定協会
・受験資格:指定大学院での既定科目の履修・実習
・試験:一次試験(筆記)、二次試験(面接)
・資格取得にかかる期間:大学4年間+大学院2年間(1年以上の臨床経験が必要な場合も有)
・資格更新:5年ごとの更新
臨床発達心理士
発達全般に関する心理支援を専門とした資格です。
・資格認定団体:一般社団法人臨床発達心理師認定運営機構
・受験資格:大学院修士課程or3年以上の臨床経験or研究職or公認心理師
・試験:一次審査(受験資格によって内容は異なる)、二次審査(個別面接)
・資格取得にかかる期間:まちまち
・資格更新:5年ごとの資格更新
学校心理士
学校生活に関する心理教育的援助を専門とした資格です。
・資格認定団体:一般社団法人学校心理士認定運営機構
・受験資格:大学院修士課程+1年以上の実務経験or大学卒+実務経験4年以上or公認心理師など
・試験:Ⅰ(論述)、Ⅱ(多肢選択式)、Ⅲ(面接)、Ⅳ(講習会後)
・資格取得にかかる期間:まちまち
・資格更新:5年ごとの資格更新
認定心理士
心理学の専門家としての標準的基礎学力と技能を修得していることを認定する資格です。
・資格認定団体:日本心理学会
・受験資格:大学における心理学関係科目の取得
・試験:なし
・資格取得にかかる期間:4年間
・資格更新:なし
学会が認定しているカウンセラー資格
多くの学会が資格認定をしています。専門の心理療法やアプローチに特化した資格ではなく、汎用的なカウンセラー資格であることを謳っている資格を取り上げました。
認定カウンセラー
日本カウンセリング学会による認定資格です。実践だけでなく研究にも重きをおいているようです。
・資格認定団体:日本カウンセリング学会
・受験資格:学会員として1年もしくは2年以上の在籍、認定カリキュラムの修了(推薦の場合はカウンセリングに関する業績が必要)
・試験:書類審査・筆記試験・口述試験(推薦の場合は書類審査と面接試験)
・資格取得にかかる期間:不明
・資格更新:なし
メンタルケア学術学会による認定資格
いくつかの資格認定を行っているためまとめました。
メンタルケアカウンセラー
・資格認定団体:メンタルケア学術学会
・受験資格:メンタルケア学術学会指定の講座を受講
・試験:添削課題、レポート提出
・資格取得にかかる期間:約3か月
・資格更新:なし
メンタルケア心理士®
・資格認定団体:メンタルケア学術学会
・受験資格:受験資格は特になし(認定申請には指定講座の修了、もしくは認定心理士資格・産業カウンセラー資格の保有または心理近接領域の大学卒業が必要)
・試験:学科試験、実技・口述試験
・資格取得にかかる期間:不明
・資格更新:なし
メンタルケア心理専門士®
・資格認定団体:メンタルケア学術学会
・受験資格:受験資格は特になし(認定申請には指定講座の修了、もしくは臨床心理士資格資格の保有または心理近接領域の大学卒業が必要)
・試験:学科試験、実技・口述試験
・資格取得にかかる期間:不明
・資格更新:なし
その他:ペットロスハートケアカウンセラー、アニマルペットケア療法士
民間団体によるカウンセラー資格
あまりに膨大なため、名前の知られているものや検索をするとよく出てくるものに絞りました。
産業カウンセラー
主として働く人や組織のためのメンタルヘルスについての支援が専門です。1992年~2001年までは公的資格であったため、知名度や社会的信用度は比較的高い印象があります。
・資格認定団体:一般社団法人日本産業カウンセラー協会
・受験資格:協会による講座の修了、大学院において指定科目を履修していること
・試験:学科試験、実技試験
・資格取得にかかる期間:最短で約6か月
・資格更新:なし
一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)による認定資格
膨大な数の資格を認定しているため1つにしました。ほとんどが通信講座と筆記試験(在宅)で取得可能です。
メンタル心理カウンセラー
・資格認定団体:一般財団法人 日本能力開発推進協会(JADP)
・受験資格:認定講座を受講(通信講座)
・試験:在宅での筆記試験
・資格取得にかかる期間:約2か月
・資格更新:なし
上級カウンセラー
・資格認定団体:一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)
・受験資格:認定講座を受講(通信講座)
・試験:在宅での筆記試験
・資格取得にかかる期間:約2か月
・資格更新:なし
その他
行動心理士 カラーセラピスト、家族療法カウンセラー チャイルドカウンセラー、うつ病アドバイザー、夫婦カウンセラー、JADP認定チャイルドコーチングアドバイザー®、産業心理カウンセラー、メンタル心理アドバイザー、シニアピアカウンセラー、不登校訪問支援カウンセラー、ポジティブ心理学実践インストラクター®、スポーツメンタルトレーナー、自己肯定感アップカウンセラー、夢分析カウンセラー
プロフェッショナル心理カウンセラー
認定団体はカウンセラー養成学校の経営者とカウンセラーによって運営されているようです。
・資格認定団体:一般社団法人全国心理業連合会
・受験資格:認定教育機関でのカリキュラムの修了、および推薦状
・試験:筆記試験、ロールプレイ及び口頭試問(「上級」の場合は加えて小論文)
・資格取得にかかる期間:不明
・資格更新:なし
カウンセラー資格はどれが役立つのか
カウンセラーの資格を取りたいと考えている方にとって、こういった膨大なカウンセラー資格の中の、一体どれが役立つのか(もしくは役に立たないのか)ということは気になる点でしょう。
しかし、何が役立って何が役に立たないかというのは、何を目的とするかによって異なってくると思われます。カウンセラーとして仕事をしたいのか、今の仕事の中にカウンセリングについての知識を取り入れたいのか、それとも、自分の興味関心でカウンセラー資格を取ってみたいのか。その目的によって、どの資格が「役立つか」は変わってきます。
カウンセラーとして働きたい場合
もし、医療や教育、福祉といった領域でカウンセラーの仕事をしたいのであれば、国家資格である公認心理師、もしくは民間資格として実績のある臨床心理士を取得するのがおすすめです。
現在(2020年10月)、公認心理師はこれまで心理職として働いていた人が資格を取得するための移行措置を取っており、そのため求人では臨床心理士も条件となっていることがほとんどです。ただし、移行措置の終わる2022年以降は、恐らく公認心理師が求人の必須条件となってくるものと思われます。
また、臨床発達心理士や学校心理士、キャリアコンサルタントを取得し発達支援領域や教育領域、産業領域で働くことを目指すという道もあります。
他の民間資格の中にも就職に役に立つとうたっているものがありますが、少なくとも医療や教育、福祉といった現場では、そういった資格が就職に有利に働くことは少ないと思われます。筆者の経験ではありますが、通信講座で取得できるような資格が求人条件としてあげられていることはこれまで見聞きしたことがほとんどありません。
ただ、公認心理師や臨床心理士などの資格を取得しても、必ずしも希望する仕事につけるとは限らないのが現状です。就職できたとしてもパートタイムや非常勤といった待遇であることも多いです。そういった就職事情についても十分調べた上で資格取得をするかどうかを検討する必要があるでしょう。
現在の仕事や興味のためにカウンセラー資格を取得したい場合
もし、カウンセラーとして働くのではなく、今の仕事に活かしたいという目的や、自分自身の興味関心で学んでみたいというのであれば、手軽な通信講座が役立つと思われます。
人と関わることが多い仕事や人との面談をするような仕事であれば、心理学の知識やカウンセラーのための知識が普段の仕事に役立つことがあるでしょう。また、自分自身や周囲の人を理解する一助にもなると思われます。
身近な人にカウンセリングするためにカウンセラー資格を取得したい場合
会社の部下や同僚、友人や家族、恋人といった身近な人を助けたくてカウンセラーの資格を取ろうと思う方もいるでしょう。ただ、そういった身近な相手に対してカウンセリングをすることにはリスクが伴います。
カウンセリングにおいては、「カウンセラー-クライエント」の二人が他の関係性(部下や同僚、友人、恋人、家族など)でもあることは「二重関係」と呼ばれ禁忌とされています。個人的な関係性がカウンセラーに求められる中立性に影響し、クライエントにとって有益なカウンセリングが行えないばかりか、時には大きな害をもたらすからです。
身近な人を助けたいのであれば、自分自身がその方のカウンセラーにはならない方がお互いのためです。カウンセラーではなく、上司として、同僚として、友人、家族、恋人として相手を支えることは出来ますし、それはカウンセラーには担えない何よりも大切な役割です。
もし、相手をどのように支えればいいのか分からないという心配があるのであれば、カウンセラーの資格を取るよりも、自分自身がカウンセラーに相談する方が得策かもしれません。
まとめ
カウンセラーの資格を取りたいと考えている方に向けて、カウンセラー資格について説明しました。大事な点は以下の3つになるかと思います。
・多くのカウンセラー資格が団体や企業が認定する民間資格である
・就職における実用度や社会的信用度は資格によってまちまちである
・どのカウンセラー資格が役立つかは資格を取る目的によって変わってくる
カウンセラー資格の取得を考えている皆さんのお役に立てれば幸いです。