本の紹介

『発達障害サバイバルガイド』:生活上の困りごとを抱えるすべての方に

「発達障害サバイバルガイド」借金玉

 『発達障害サバイバルガイド――「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』(ダイヤモンド社)は、発達障害当事者である著者による「生き延びるための生活術」です。

 家事や食事、生活習慣から休息の仕方やお金の使い方まで、さまざまな生活における困りごとが網羅されているのですが、本書で示される「生活術」はどれも非常に具体的で、すぐに明日からでも取り組めそうなものとなっています。巻末には著者が「生活術」を実行するときに実際に使っている「愛用品」のリストも載っていました。あくまで発達障害の方のための「サバイバルガイド」ではありますが、生活上の困りごとを抱える全ての方に役立つのではないでしょうか。

 発達障害の二次障害*である「うつ」に対する対策についても1章が割かれており、著者自身のうつ経験から、地道な積み重ねの大切さやセルフモニタリングの重要性などについて書かれていました。こういった派手さのない対策というのはサラッと説明されると、シンプルであるが故に大した効果がないように捉えられることも多いものですが、このように著者の経験にもとづいて発信されると非常に説得力があります。

 説得力でいえば、著者独特の言い回しによる短文で本質を突いた名言が随所にちりばめられており、こういった言葉のセンスと表現力もまた、本書の説得力と読みやすさを高めている理由なのだろうと思います。

あなたの人生をよくするのは、「努力」ではなく「設備投資」です。

「発達障害サバイバルガイド」(ダイヤモンド社)

「できないことはできない」から始めよう

「発達障害サバイバルガイド」(ダイヤモンド社)

どんな状況にあっても、あなたの日常は幸福なものであるべきなのです。あなたは日常の中から幸福を受け取る権利があるのです。

「発達障害サバイバルガイド」(ダイヤモンド社)

人生において最も重要なスケジュールは休息である

「発達障害サバイバルガイド」(ダイヤモンド社)

いついかなるときでも「休む」という判断は正しい。そして、その苦しい判断をしたあなたは頑張っています。どうか、忘れないでください。

「発達障害サバイバルガイド」(ダイヤモンド社)

 また何よりも、著書全体に「あなたは悪くない」「幸せになろう」という著者のメッセージが滲み出ており、同じような苦労と苦悩を抱えてきた人はとても励まされるのではないでしょうか。繰り返し出てくる「やっていきましょう」という言葉には、自分を受け入れるのって哀しいけど幸せを目指してやっていこうよ、とそっと後押ししてくれるような温かいエールを感じます。

 最後になりますが、前著である『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』には組織で働くことに関するライフハックが書かれており、こちらもおすすめです。

 組織というものののあり様を「部族」「茶番センサー」「見えない通貨」といった名言と共に「圧倒的な解像度」で読み解いています。仕事や生活習慣についてのライフハックもありますが、何よりも人間関係―雑談や飲み会など発達障害の方にとって難易度の高い事柄―についての解説と具体的対策がユニークかつ実践的でした。

*二次障害:「発達障害に起因する苦しみの中で副次的に精神疾患等の問題を発症してしまうこと」(本書p274より引用)

*下記リンク先の記事には本書からの抜粋や関連記事がありました。本書の詳細な目次や「はじめに」の一部も読むことが出来ますので、本書の購入の参考になるのではないかと思います。

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中野カウンセリングオフィス
東京都中野区にあるカウンセリングオフィスです。臨床心理士、公認心理師。著者の詳しいプロフィール、カウンセリングサービスについては下記サイトをご覧ください。